「さよならすあばさん」すあばさん夢小説あるいはスーパー内輪向け私小説

それは雨降る夜かもしれなかったし、日光が燦々と降り注ぐお昼休みだったかもしれない。

それは特に記述がなかったのでよくはわからない。

ただ、私が歩いていたことは確かで、その視界にひとつの黒い影を認めたのもやはり確かなことであった。

古ぼけた駄菓子屋さん(妙にこの記録だけ具体性があった、それはたしかに埃っぽい、田舎臭い、三千年間このまんまでしたみたいな顔をした駄菓子屋なのだった)の脇の小道からそれは姿を現したのだ。

 

すあばさん。

 

身長20m、脚は六本、体色は黒檀よりも悪魔よりも黒い黒。好きなキャラを足からバリバリ食べる生物。それが「すあばさん」。決してあめいさんでもなければ尚の事キャスターマシマシチョモランマであろうはずもない。まごうことなき程にすあばさん。

すあばさんは食事中だった。バリバリ音が鳴っているのですぐに分かる。食べられている生き物の腰から上がすあばさんの大きな口からはみ出ている。あれはアルジュナだ。アルジュナが食われていた。食べられているのはアルジュナだった。カレーだと信じたいがどうしようもないほどにアルジュナだった。

どうしよう、身体に震えが走る。今の私は鏡を所持していない。もし私の姿がすあばさんの好きなキャラであったなら大事だ。次に食べられるのは私だ。私に違いないのだ。急いでなんとかせねばなるまい。

私は手早く手元の端末を操作してFate/GrandOrderを起動させる。そしてガチャ画面に移行。頼む、なにか良い英霊出てくれ。スタースクリームとかそういうのじゃないやつ来てくれ、頼む。

単発でガチャを回した。私は天草四郎となった。

「キャーやめて!」

頭からバリバリ食われた。すあばさんは天草四郎が好きだから食べたのかそれとも好きでもなんでもないから足からは食べなかったのだろうか。そんなことを考えながら私は死んだ。

さようならすあばさん。